INFORMATION TITLE【ケトン体は胎児、新生児に非常に重要なものである】
胎児だけではなく、新生児にもケトン体は非常に重要な物質です。
30年以上前からケトン体が新生児の血中にたくさん存在し、非常に重要な役割をしておりということが分かっていたようですが、そこから考えれば、胎児もケトン体濃度が高いことは推測できますし、それが胎児にとって良いことなのだということは容易に想像ができるはずです。
しかし、宗田先生が実際に胎盤や新生児のケトン体を発表するまでは、なかなか胎児や新生児にとってのケトン体の有益性が理解されていなかったように感じます。
胎児期の脳神経系だけではなく全ての細胞の成長には、コレステロール生合成が不可欠です。
ケトン体は酵素により直接コレステロール合成系に利用されることがわかっていて、ケトン体が胎児のエネルギー源として利用されるだけでなく、子宮の中での発生や成長の脂質合成に利用されている可能性が考えられています。
ケトン体をコレステロールに変える酵素は、脳をはじめ、肝臓や骨などにも認められており、ケトン体がエネルギー源だけではなく、様々な臓器が形成されるときのコレステロール供給源にもなっているという可能性があるのです。
また、生まれたばかりの新生児では、全身の体重に対する脳の大きさが非常に大きく、体重の10%にもなり、全身の消費エネルギーの60%も脳が消費してしまいます。
新生児はグルコースを1日約9g産生していると言われていますが、このグルコース産生量は、400gの新生児の脳のグルコース利用要求量とほぼ同じで、不安定なバランスのために、脳の栄養のためにグルコースの代わりとなるエネルギーが絶対的に必要です。
そのため、新生児は生理的なケトーシス(血中のケトン体が上昇している状態)で、成人であれば断食して1〜2日後に見られるようなケトン体の濃度になっています。
成人と比較して新生児の脳のケトン体の取り込みは4倍とも40倍とも増加すると言われています。
新生児の脳は毎分3~8μmol/100g脳重量の速度でケトン体を利用でき、体全体では体重1kg当たり2~3gのケトン体を毎日エネルギーにしています。
新生児の中枢神経系は毎日の肝臓が作るケトン体産出量の約4分の1から2分の1を消費する可能性があります。
逆に言えば、新生児期はケトン体産生が当たり前であり、それをエネルギーとして利用できないことが致命的な問題になり得ると考えられます。
通常でも生理的なケトーシスであり、活発にケトン体を利用しているのですが、それが利用できないような状況になると、ケトン体が病的に高くなってしまう可能性があります。
そのことが、SIDS(乳幼児突然死症候群)の原因の一つとも考えられており、実際にはSCOTというケトン体をエネルギーとして利用するための酵素の欠損に起因する可能性があると言われています。
血糖値は、正期産児よりも早産児でより変化が大きく、低血糖であっても早産児はケトン体濃度が低いと言われています。
血糖値が低くても正期産児はケトン体産生能力があり、早産児はケトン体産生能力が限られているということです。
早産児では内分泌系や酵素制御が完全な状態で生まれてきていないので、子宮の中で胎盤を通して栄養をもらっているという状態から、子宮の外に出て摂食と絶食を交互に繰り返すような状態に対しての適応が失敗するか、または不完全である場合、体内の血糖やエネルギーの状態の不均衡が生じる可能性があります。
出生後最初の数時間では、早産児の血糖値は低下しやすく、正期産児よりも子宮内での栄養の中断に適応する能力が低いことが示唆されています。
また、母乳と人工乳の新生児では、母乳の新生児ではケトン体の濃度が高かったのですが、空腹時と摂取後の血糖値の差は認められませんでした。母乳はグルコース濃度が低く、低エネルギーであり、そのことがさらに新生児のケトン体産生能力を活発化させているとも考えられます。
そのようなことから、新生児を含めて乳幼児に必要以上に糖質を与えることは、中枢神経系の発達に対して悪影響をもたらすと考えられます。
もちろん、胎児の時期にも、母体を高血糖、高インスリン血症にしないことも、同様に胎児の成長に重要なことになります。
また、早産児はエネルギー欠乏に見舞われやすいことも注意が必要です。
早産児でケトン体産生能力が低いことが、「子宮内プログラミング」であるとすると、成人してもケトン体を作る能力が低く、糖質制限をした場合にエネルギー切れを起こす可能性も考えられます。また、ケトン体をエネルギーにする酵素に欠損があっても、同じように糖質制限は難しくなると考えられます。
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